片頭痛と緊張型頭痛はどう違うのか
頭痛とひと口に言っても、その正体は大きく異なる。日本の頭痛診療の現場で最も多く見られるのが緊張型頭痛と片頭痛の2つだ。緊張型頭痛は約2000万人、頭をギューッと締め付けられるような痛みが特徴で、肩こりや目の疲れ、デスクワークによる姿勢の悪さが引き金になる。痛みは軽度から中等度で、動いても悪化しにくいため「なんとなく重い」と放置されがちだ。
一方の片頭痛は、脈を打つようにズキンズキンと痛み、動くと悪化する。頭の左右どちらか片側が痛む人が約6割で、吐き気や光・音・においへの過敏を伴う。片頭痛発作は4時間から72時間続くこともあり、毎日60万人もの日本人が日常生活に支障をきたしているという報告もある。痛みの質がまったく違うので、自分がどちらのタイプかを知ることが治療の第一歩になる。
片頭痛の患者は女性が男性の約4倍で、75%の人が35歳以前に発症する。ホルモンバランスの変動が関係するため、月経周期に合わせて発作が起こる人も少なくない。さらに気圧の変化も大きな誘因で、日本では「天気痛」と呼ばれるほど気象と頭痛の関係が広く知られている。低気圧が近づくと頭痛が悪化する人は、天気予報の気圧情報をチェックする習慣をつけると発作の予測がしやすくなる。
市販薬を飲み続ける落とし穴
頭痛のたびに市販の鎮痛剤を飲んでいる人は注意が必要だ。トリプタンや複合鎮痛薬を月10日以上、単純な鎮痛薬を月15日以上、3か月を超えて使い続けると、かえって頭痛が悪化・慢性化する薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)を起こすことがある。痛みが怖くて早めに飲む習慣が、実は頭痛を長引かせているのだ。
薬が効きにくくなった、頭痛がない日がない、胃の調子が悪いといった症状があるなら、まず頭痛外来か脳神経内科を受診してほしい。日本の頭痛診療は専門医による問診と神経診察を基本とし、必要に応じてMRIやCTを組み合わせる。多くの慢性頭痛は画像検査で異常が出ないため、症状の経過を丁寧に聞き取る問診が診断の中心になる。受診の際には、いつから、どんなときに、どのくらいの頻度で痛むのかをメモしておくと診断がスムーズだ。
治療の選択肢と費用の目安
日本の医療機関で受けられる頭痛治療は、急性期の痛みを抑える薬と、発作そのものを減らす予防療法に分かれる。片頭痛の急性期治療にはトリプタン製剤が標準的で、効かない場合や使えない場合には新しい経口薬も選択肢に加わっている。月に2回以上の発作、または日常生活に支障をきたす頭痛が月3日以上ある場合は予防療法を検討する。
2021年以降、日本でもCGRP関連抗体薬が登場し、片頭痛の予防療法は大きく変わった。月1回の皮下注射で発作頻度を減らすこの薬は、これまでの予防薬が効かなかった人にも新たな選択肢を提供している。費用は保険適用で3割負担の場合、診察のみの初診で2000円から3000円程度、MRIを含めると5000円から1万円程度が目安となる。以下に主な治療選択肢をまとめた。
| 分類 | 代表的な選択肢 | 投与間隔 | 費用の目安(3割負担) | 適している人 | 注意点 |
|---|
| 急性期治療 | トリプタン製剤 | 発作時 | 1錠あたり20〜140円 | 中等度以上の片頭痛 | 月10日以上の使用は薬物乱用頭痛のリスク |
| 急性期治療 | 新しい経口薬(リメゲパント) | 発作時・予防 | 保険適用(医療機関に確認) | トリプタンが効かない人 | 2025年から日本で使用可能 |
| 予防療法 | CGRP関連抗体薬(注射) | 月1回 | 1本あたり約1万2000〜1万3000円 | 月2回以上の発作がある人 | 効果は2〜3か月で実感しやすい |
| 予防療法 | 内服予防薬(ロメリジンなど) | 毎日 | 保険適用 | 発作頻度を減らしたい人 | 効果が出るまで2〜3か月かかる |
| 非薬物療法 | 頭痛ダイアリー、生活指導 | 毎日記録 | 追加費用なし | 全タイプ | 誘因の特定に有効 |
費用は医療機関や保険の種類によって異なるため、あくまで目安として考えてほしい。予防薬は頭痛がない日も毎日服用する点が特徴で、発作頻度と重症度を下げることを目的としている。
頭痛ダイアリーから始める自己管理
治療を始める前に、まず2週間から1か月の頭痛ダイアリーをつけてみよう。発作の日時、痛みの程度、場所、前触れ、その日の天気や睡眠時間、食べたもの、月経の有無を記録するだけだ。頭痛専門医はこの記録をもとに誘因を特定し、薬の選択や生活指導に活かす。スマホのアプリを使えば、通勤中でも数秒で記録できる。
日本の頭痛外来は都市部を中心に増えており、脳神経内科や脳神経外科、内科に併設されていることが多い。かかりつけ医に相談して紹介状を書いてもらう方法もあるし、頭痛学会の専門医がいる施設を直接探すこともできる。市販薬を月に10日以上使っている、頭痛のために休みがち、吐き気やしびれを伴う頭痛がある場合は、早めに専門医の門を叩こう。
頭痛は我慢するものではない。正しい診断と治療で、日常生活の質は確実に改善する。痛みの記録を習慣にし、自分に合った治療法を医師と一緒に選ぶことが、頭痛と上手につきあう近道だ。