頭痛は「病気」ではなく「症状」。まずはタイプを知る
頭痛をひとくくりに考えてしまうと、ずっと迷子のままです。医学的には、頭痛は「一次性頭痛」と「二次性頭痛」に大別されます。二次性頭痛は、くも膜下出血や脳腫瘍、髄膜炎、緑内障、副鼻腔炎など、別の病気が原因で起こる頭痛です。命に関わるケースもあるため、突然の激しい痛み、手足の麻痺、言葉が出ない、発熱を伴うといった場合は迷わず救急受診してください。
そのうえで、多くの人が日常的に経験しているのが一次性頭痛です。代表格は次の3つです。
片頭痛は20〜40代の女性に多く、片側性・拍動性の中等度から重度の痛みが特徴です。痛みに加えて吐き気や嘔吐、光や音がまぶしく感じるといった随伴症状を伴い、仕事や家事を中断せざるを得ないことも珍しくありません。頭痛の前に、視野にギザギザした模様が見える「前兆」が現れる人もいます。
緊張型頭痛は、肩こりやストレス、長時間のデスクワークがきっかけで起こることが多く、頭全体をギューッと締め付けられるような痛みが続きます。片頭痛ほど動けなくなることはありませんが、慢性的に続くため気づかないうちにQOLを下げています。
群発頭痛は、目の奥がえぐられるような激痛が片側に起こり、数週間から数か月にわたって毎日のように発作が繰り返されるものです。頻度は低いものの、痛みの強さは「自殺頭痛」と呼ばれるほど。このタイプは自己判断せず、必ず専門医の診察を受けてください。
市販薬に頼りすぎるリスクと、頭痛外来の受診サイン
「どうせ頭痛持ちだから」と市販の鎮痛薬を飲み続けている人に、ひとつ注意点があります。鎮痛薬の使いすぎ自体が新しい頭痛を生むことがあるのです。薬剤の使用過多による頭痛は、日本頭痛学会のガイドラインでも明確に警告されています。週に3日以上の頻度で鎮痛薬を服用しているなら、その時点で一度専門医に相談する目安です。
では、どのタイミングで医療機関にかかるべきでしょうか。目安は以下のとおりです。
- 頭痛のせいで仕事や家事、学業に支障が出ている
- 市販薬が効かなくなってきた、飲む回数が増えている
- 朝起きたときや、いつも決まった時間に頭痛が起こる
- 生理周期や天気の変化と頭痛の関係がはっきりしている
- 頭痛の様子がこれまでと変わってきた
受診先としては、脳神経内科や脳神経外科の「頭痛外来」が第一候補です。近年は全国の主要都市で頭痛専門外来や頭痛センターが整備され、国立病院機構の各施設にも専門の外来が設けられています。かかりつけ医に相談すれば、近隣の専門外来を紹介してもらうことも可能です。
頭痛外来では、頭痛の性状、発症時期、増悪傾向、随伴症状などを丁寧に聞き取り、必要に応じてCTやMRIなどの検査を行います。大切なのは、自分の頭痛の様子を具体的に伝えることです。痛みの場所、痛み方(ズキズキか、締め付けられるか)、頻度、持続時間、きっかけ、市販薬の使用状況などをメモしてから受診すると、診断がスムーズに進みます。頭痛ダイアリーを活用するのも効果的で、スマートフォンのアプリなら記録の手間も最小限に抑えられます。
急性期治療と予防療法。いま日本で受けられる選択肢
頭痛治療は大きく「発作が起きたときの急性期治療」と「発作の頻度や強さを減らす予防療法」に分かれます。
急性期治療では、まずアセトアミノフェンやNSAIDsといった一般的な鎮痛薬が使われます。片頭痛と診断された場合には、より頭痛に特化したトリプタン製剤が処方されることもあります。2022年には、新しいタイプの薬であるラスミジタンも国内で使用できるようになりました。こうした頭痛専用の薬は、市販薬が効きにくい発作に対して効果を発揮します。
一方、頭痛の頻度が高い、生活への支障が大きいという場合は、予防療法が検討されます。予防療法は毎日服用するタイプのものと、数週間から数か月に一度の注射で効果が持続するものがあります。特に注目されているのがCGRP関連抗体薬です。片頭痛の発症メカニズムに関わるたんぱく質に着目したこの薬は、これまでの予防薬と比べて効果の出方や使い勝手の面で新しい選択肢となっており、国立病院機構をはじめ多くの医療機関で導入が進んでいます。いずれも保険診療の範囲内で処方されるため、経済的な負担は治療内容によって異なりますが、まずは専門医に相談して適応を判断してもらうことが大切です。
| 治療の種類 | 代表的な選択肢 | おおよその費用感 | こんな人に向く | 利点 | 注意点 |
|---|
| 急性期・軽度 | アセトアミノフェン、NSAIDs | 市販薬なら数百円〜、処方なら保険適用 | 発作が月に数回程度の人 | 手に入りやすく使い慣れている | 使いすぎると薬剤使用過多の頭痛のリスク |
| 急性期・片頭痛用 | トリプタン製剤、ラスミジタン | 保険適用(自己負担は診療内容による) | 市販薬が効かない片頭痛の人 | 頭痛に特化して効果が高い | 専門医の処方が必要 |
| 予防療法 | 経口予防薬、CGRP関連抗体薬 | 保険適用(抗体薬は高額だが公的医療保険の範囲) | 発作が頻繁で生活に支障がある人 | 発作の頻度・強さを根本から減らせる | 効果が出るまで数か月かかることもある |
日常でできるセルフケア。天気と付き合う工夫も
治療薬と並行して、日常生活の見直しも頭痛対策には欠かせません。片頭痛の発作は、睡眠不足や寝すぎ、空腹、ストレス、特定の食品、生理周期、そして気圧の変化など、さまざまな要因で誘発されます。日本では低気圧が近づくと頭痛が悪化する「気象頭痛」を訴える人が多く、天気予報アプリに頭痛予報が組み込まれるほど一般的な悩みになっています。
自分なりのトリガーを知るには、やはり記録が有効です。頭痛が起きた日時、その前日の睡眠時間、食事内容、天気、ストレスレベルを1か月ほどつけてみてください。パターンが見えてくると、対策の精度が格段に上がります。たとえば気圧の影響が強い人なら、雨の前日に無理をしない、普段より早めに休息をとるといった予防的な行動がとれるようになります。
また、緊張型頭痛が中心なら、デスクワークの合間のストレッチや、首・肩の筋肉の緊張をほぐすことが直接的な改善につながります。適度な運動、規則正しい睡眠、カフェインのとりすぎに注意するといった基本的な生活習慣も、頭痛の頻度に影響します。
まずは「記録」から始めて、専門医への一歩を
頭痛は我慢すれば治るものではなく、適切に診断され、適切に治療されれば、かなりの改善が期待できる症状です。その一方で、十分な治療を受けられていない人もまだまだ多いのが現状です。冒頭で触れたとおり、日本では多くの人が頭痛に悩みながらも市販薬でやり過ごしています。
もし今、頭痛に日常生活を左右されているなら、まずは1週間だけ頭痛ダイアリーをつけてみてください。それだけで、自分の頭痛がどんなタイプなのか、どんなきっかけで起こるのかが見えてきます。そして、その記録を持って、一度頭痛外来の扉を叩いてみてください。専門医の診断を受け、自分に合った急性期治療や予防療法を知ることは、決して特別なことではありません。今日のズキズキを、明日の自分に持ち越さないために。