なぜ日本人に頭痛が多いのか
国内の調査では、天気の変化で体調を崩すと感じる成人はおよそ6割にのぼるといわれる。とりわけ梅雨と台風シーズン、低気圧が近づくたびに頭痛やめまいに悩む人は少なくない。気圧の変化を耳の奥の内耳が敏感に察知し、自律神経が乱れて血管が拡張するのが主な仕組みだ。
一方、働き盛りの世代に多いのが緊張型頭痛。長時間のデスクワークによる首・肩のこりが後頭部全体を締め付ける。日本は世界でも有数の長時間労働文化を持つ国だけに、頭痛を抱えながら出社する人が絶えない。
15歳以上の日本人の10人に1人程度が片頭痛を持つとも言われ、頭痛による経済損失は社会問題として指摘されてきた。頭痛で仕事の集中力が落ち、生産性が下がる。それでも「怖くない頭痛だから」と専門医を受診せず、市販薬でやり過ごす人が多いのが現状だ。
タイプ別に見る頭痛の見分け方
| タイプ | 特徴 | 出やすいタイミング | 主な対処 |
|---|
| 片頭痛 | こめかみがズキズキ、吐き気・光や音に敏感 | 低気圧の前、生理前後、寝不足 | 静かな暗い部屋で休息、処方薬 |
| 緊張型頭痛 | 後頭部〜頭全体が締め付けられる | デスクワークの夕方、ストレス時 | 首肩のストレッチ、温める |
| 天気痛(気象病) | 低気圧接近で頭痛・めまい・倦怠感 | 雨の前、台風接近時、梅雨 | 耳マッサージ、漢方、気圧予報アプリ |
| 群発頭痛 | 片側の目の奥が激痛、数週間続く | 決まった時間帯、季節性 | 専門医による治療が必須 |
片頭痛と緊張型頭痛は混在することも多く、自己判断が難しい。月に2回以上頭痛で予定を崩す、市販薬の効きが悪くなってきた、という人は一度専門医に相談する価値がある。
市販薬を正しく選ぶための基本知識
ドラッグストアの頭痛薬売り場に並ぶ商品は多い。ロキソニンS、イブA錠、バファリンA、タイレノールA、ノーシン、セデス・ハイなど、どれを選べばいいのか迷う人もいるだろう。
選び方の基本は成分だ。ロキソプロフェンやイブプロフェンといったNSAIDs系は炎症を抑えて効き始めが早い反面、胃への負担がある。アセトアミノフェン系は胃に優しく、眠くなる成分が入っていない商品も多い。
注意したいのが複合鎮痛薬だ。カフェインや鎮静成分を組み合わせた薬は効き目が良い反面、依存しやすく、月10日以上の使用で薬物乱用頭痛(MOH)のリスクが高まる。頭痛が頻繁にある人は、単剤の薬を選ぶ方が安全だ。
市販薬の価格帯は、ロキソニンSが12錠で700円前後、イブA錠EXが20錠で700円前後と、手に取りやすい価格になっている。ただし、これはあくまで目安であり、薬局やセール時期によって変動する。
天気痛対策は「予測」から始まる
低気圧による頭痛に悩む人は、気圧予報アプリを活用してみてほしい。1時間に3〜5hPa以上の急激な変化がある日は、敏感な人ほど症状が出やすい。前日のうちに予測できれば、睡眠をいつもより少し多めにとる、予定を詰め込みすぎないといった準備ができる。
頭痛が始まった初期段階なら、耳周りのマッサージが効果的だ。耳の上をつまんで上に引っ張る、耳たぶを下に引っ張る、耳全体を後ろ向きにゆっくり回す。それぞれ3〜5回、道具なしでデスクでもできる。
体を冷やさないことも大切だ。梅雨の時期は外は蒸し暑いのに、冷房で冷えた室内という環境が自律神経に負担をかける。羽織れる1枚を持ち歩き、温かいお茶や白湯を飲む習慣をつけると、天気痛の波が小さくなる。
漢方では、むくみやすい人の天気頭痛に五苓散、冷えやすい体質の片頭痛に呉茱萸湯が用いられる。即効性は市販の鎮痛剤に劣るものの、体質改善を目指す人には選択肢になる。
片頭痛治療の新しい流れ
これまで片頭痛は「痛いときに飲む薬(急性期治療)」と「発作を予防する薬(予防治療)」を別々に使うのが一般的だった。2025年12月、日本で新しい経口薬が登場した。急性期と予防の両方に使える日本初の経口薬として注目されている。専門の頭痛外来ではこうした新しい選択肢を含めて、患者一人ひとりに合う治療を提案してくれる。
トリプタン製剤やCGRP関連の予防薬も保険適用で処方されている。頭痛専門医の診療を受ければ、市販薬では届かなかった領域までカバーできる。
ツボとセルフケアの取り入れ方
こめかみの痛みには、ストレスで食いしばりからくる不快感にも効果があるとされるツボがある。人差し指の腹で軽く円を描くように押すと、首まわりがリラックスしやすい。強く押さず、ゆっくり呼吸に合わせて刺激するのがコツだ。
ツボ押しは入浴後や就寝前など、体が温まっているときに行うと効果が出やすい。一日数回程度にとどめ、「痛気持ちいい」程度の力加減を守ること。やりすぎは逆効果になる。
指で押すと刺激が強すぎる場合は、低温で火傷しないタイプのお灸や、オムロンの低周波治療器を使う方法もある。一日10〜15分を目安に首や肩をケアすると、緊張型頭痛の予防につながる。
医療機関を受診する目安
次のようなサインがある場合は、自己判断せずに脳神経外科や頭痛外来を受診してほしい。
- 初めて経験する強い頭痛で不安がある
- 痛み止めが月10日以上になっている
- 市販薬が効かない、効く量が増えてきた
- 朝起きた時から痛い、首こり・肩こりとセットでつらい
- 生理前後に悪化する、ホルモンの影響が疑われる
頭痛外来は全国の主要都市にあり、東京なら赤坂、大阪なら梅田周辺に専門クリニックが点在する。かかりつけ医に相談して紹介状をもらう方法もあれば、直接頭痛外来を予約する方法もある。脳腫瘍や脳卒中など緊急性のある頭痛との鑑別も、専門医なら的確に行ってくれる。
頭痛は我慢する病気ではなくなった。適切な治療でコントロールできる時代に、一人で抱え込まず、まずは自分の頭痛のタイプを知るところから始めてみてほしい。頭痛ダイアリーをつけて痛みの頻度やタイミングを記録しておくと、受診の際に役立つ。明日の天気予報を見るとき、自分の体調予報も一緒に意識してみてはいかがだろうか。