薬局まで行けない人が増えている
処方薬を自宅に届ける仕組みは、決して新しいものではありません。在宅医療の現場では、薬剤師が訪問して薬を渡す取り組みが長く続いてきました。ただ近年、その対象がぐっと広がりました。共働きで日中動けない人、子育てや介護に追われる人、足腰が弱って通院が負担な人。外出が難しい人たちに、調剤薬局やドラッグストアが配送の選択肢を用意し始めています。
都市部の悩みは時間です。薬局の営業時間内にどうしても動けない。そんな人向けに、スマートフォンで受付を済ませ、処方せんを事前送信し、店頭での待ち時間を減らすサービスが全国で導入されています。この種の受付サービスは、患者会員数が125万人を超えた例もあるほど身近になりました。一方で地方には、距離そのものが壁になる地域があります。長崎県五島市では、高齢者施設の職員が薬を受け取りに片道1時間かけて市街地へ向かっていました。往復2時間の移動を減らそうと、このところはドローンによる処方薬配送の取り組みも始まっています。陸路で60分かかる道のりを約25分で届けるそうです。
高齢化と過疎化が進む日本では、薬局まで歩いて行ける環境が整っている地域はむしろ限られます。かかりつけ薬局を持つことの大切さはそのままに、薬の受け取り方だけを自分の暮らしに合わせて選べる時代になったといえます。
主な配送サービスを比べてみた
一口に処方薬の配送といっても、サービスによって仕組みが違います。代表的なものを整理しました。
| サービス | 特徴 | 配送料の目安 | 向いている人 | メリット | 注意点 |
|---|
| SOKUYAKU | オンライン診療から服薬指導、配送まで一括で完結 | 当日配送660円、翌日配送550円(税込) | 通院の時間を確保できない人 | 予約制で待ち時間がない | 症状によっては対面診療を求められる |
| おくすりおうち便 | オンライン服薬指導とセットで、当日配送エリアを順次拡大 | 1診療につき900円(税込)、冷蔵薬は別途 | 東京23区、横浜市、川崎市など都市部の人 | 専任スタッフが対応、自宅完結 | 冷蔵が必要な薬は追加費用がかかる |
| 薬急便 | 全国2,300店舗以上の薬局で受付や配送に対応 | 店舗や薬局ごとに異なる | 近所の薬局を使い続けたい人 | 待ち時間の短縮や調剤完了の通知が受けられる | 対応範囲は導入店舗による |
| 地域の調剤薬局の宅配 | かかりつけ薬局が直接届ける | 250円から500円程度のところが多い | 地域密着の対応を求める人 | 在宅訪問や服薬管理の相談にも乗ってくれる | 営業日や配送時間が限られる |
表にしただけでも、選択肢の幅はかなり広いと感じます。都市部でスピードを求めるなら当日配送を用意したサービスが、地域に根ざした対応を求めるならかかりつけ薬局の宅配が合います。どちらを選ぶにしても、大切なのは薬の受け取りだけではなく、薬剤師のフォローが受けられるかどうかです。
配送サービスを選ぶときのポイント
かかりつけ薬局に宅配があるか確認する
まずは普段使っている薬局に問い合わせてみるのが早いです。処方薬の宅配は、意外に思うほど多くの薬局で対応しています。先ほどの表にあるように、配送料を数百円に抑えている地域密着型の薬局も少なくありません。なくても、近隣の調剤薬局を探すときに「宅配」「配達」の対応を条件に加えると、選択肢が絞れます。
薬の特性と配達方法を確認する
冷蔵保存が必要な薬や、湿気に弱い薬は扱いが異なります。クール便での配送が可能か、受け取ったあとの保管方法はどうするか。あらかじめ確認しておくと安心です。その薬の状態がいつもと変わらないか、届いたときに一緒に確かめられるのも、薬剤師が届ける宅配サービスの利点です。
服薬指導の受け方を確認する
薬を受け取る前に、薬剤師による服薬指導が行われます。最近は電話やビデオ通話を使ったオンライン服薬指導が主流で、時間を指定すれば仕事の合間にも受けられます。副作用や飲み合わせの心配があれば、この機会にしっかり相談しておきましょう。
実際に使うまでの流れ
初めてでも手順は簡単です。まず、オンライン診療か通院で処方せんを出してもらいます。次に、配送に対応した薬局を選び、処方せんを送信します。薬局側で調剤が終わると服薬指導の連絡が来るので、受け取ります。最後に、指定した日時で薬が届く流れです。かかりつけ薬局で登録すれば、次回からは毎回同じ薬剤師が継続的に確認してくれる場合もあります。処方薬の配送は、特別な人のための仕組みではなくなりました。体調がすぐれない日も、家族の用事に追われる日も、自分のタイミングで薬を受け取れる安心感は思ったより大きいです。まずは一歩、近くの薬局やかかりつけ医に相談してみてください。