デスクワーク社会に潜む二つの頭痛
日本は頭痛に悩む人が多い国として知られています。長時間のデスクワーク、首や肩のコリ、急な気圧の変化。とりわけ梅雨や台風の時期に悪化する「天気痛」に悩まされる人は少なくありません。頭痛とひと口に言っても、実はタイプによって対処法がまったく異なります。
偏頭痛は片側がズキズキと脈打つように痛み、光や音に敏感になったり吐き気を伴ったりするのが特徴です。20代から40代の女性に多く、生理周期との関係も指摘されています。一方の緊張型頭痛は、頭全体をベルトで締め付けられるような鈍い痛みが続き、夕方にかけて悪化する傾向があります。長時間同じ姿勢でパソコンに向かうオフィスワーカーや、スマートフォンを頻繁に操作する人に典型的です。
この二つを混同したまま市販薬だけに頼っていると、症状が長引くこともあります。まずは自分の痛みがどちらのタイプに近いかを、痛みの場所や時間帯を観察しながら確かめてみましょう。
市販薬と専門外来、選び方の実情
ドラッグストアではロキソニンS、カロナール、イブAといった鎮痛薬が手軽に手に入ります。ロキソニンSは炎症を抑える力が強く、カロナールは胃への負担が比較的少ないのが特徴です。しかし毎月10日以上、頭痛のために鎮痛薬を飲んでいる場合は注意が必要です。薬が切れると痛みがぶり返す薬物乱用頭痛に陥っている可能性があります。
軽い痛みが月に数回程度なら市販薬で対応してもよいでしょう。ただし痛みの頻度が増え、仕事や家事に支障をきたすようであれば、早めに頭痛外来や脳神経内科を受診するのが賢明です。2026年現在、日本の片頭痛治療は大きく進んでおり、従来のトリプタン系薬剤に加えて、発作そのものを抑える予防薬の選択肢も広がっています。
| 選択肢 | 代表例 | 費用の目安 | 向いている人 | メリット | 注意点 |
|---|
| 市販の鎮痛薬 | ロキソニンS、カロナール | 手頃な価格で購入しやすい | 月に数回の軽い痛み | すぐに手に入る | 飲みすぎると薬物乱用頭痛の恐れ |
| 頭痛外来・脳神経内科 | 大学病院、頭痛専門クリニック | 保険診療なら自己負担は原則3割 | 月2回以上、生活に支障がある人 | 正確な診断と適切な処方 | 人気の外来は予約待ちになることも |
| 鍼灸・整体 | 鍼灸院、整体院 | 1回あたり数千円程度が相場 | 肩こり由来の緊張型頭痛 | 体の緊張を直接ほぐせる | 保険適用外の施術が多い |
| 予防薬・新世代治療 | 抗CGRP抗体、経口ゲパント | 高額だが費用支援の仕組みあり | 慢性片頭痛で苦しんでいる人 | 発作の頻度そのものを減らせる | 専門医の処方が必須 |
自分に合った選択肢を見つけるには、まず自分の頭痛の頻度と重症度を記録することから始めるのがおすすめです。
今日からできるセルフケア
医療機関に通う前に、日常生活で改善できるポイントは意外とたくさんあります。
まず姿勢です。パソコンの画面が目線より低いと、無意識に首が前に突き出て筋肉が緊張します。画面の上端を目の高さに合わせ、足裏を床につけて座るだけで肩こり由来の緊張型頭痛はかなり軽くなります。
次に水分とカフェイン。脱水は頭痛の大きな誘因です。コーヒーや緑茶の飲みすぎに注意しつつ、意識的に水を飲む習慣をつけましょう。カフェインは少量なら偏頭痛の痛みを和らげる効果が知られていますが、毎日大量に摂ると逆に頭痛を招くこともあります。
冷やし方と温め方も頭痛のタイプで変わります。偏頭痛の場合は痛む側のこめかみを冷やすのが効果的です。緊張型頭痛の場合は首や肩を温めて血行を促すと楽になります。入浴や蒸しタオルで体を温めると、夕方の締め付け感が和らぐのを実感できるでしょう。
大阪で営業職を務める佐藤さん(40代)も、まさにこの壁にぶつかっていました。朝から夕方までパソコンと車の往復で、締め付けられるような頭痛がほぼ毎日起きていたそうです。整形外科で処方された筋弛緩薬に加えて、画面の高さを調整し、1時間ごとに肩を回す習慣を取り入れたところ、痛み止めを飲む日が月に数回まで減ったといいます。彼のように、原因を特定して地道に対策するのが近道です。
医療機関を受診するタイミング
自分でできる対策を続けても改善しない場合は、専門医の力を借りましょう。特に、突然これまでにない激しい痛みが起きた、手足のしびれや言葉のもつれを伴う、発熱とともに首が硬くなる、といった症状があれば迷わず救急を受診してください。命に関わる病気が隠れている可能性があります。
そうでなければ、まず近くの頭痛外来や脳神経内科を探してみてください。受診の際には、いつから痛いのか、どの部分がどう痛むのか、月に何回あるのかをメモして伝えると診断がスムーズです。最近では頭痛の記録ができるスマートフォンアプリも多く、頭痛ダイアリーとして医師と共有する人も増えています。
診察では、問診を中心に症状が詳しく確認されます。必要に応じて画像検査や血液検査が行われ、偏頭痛や緊張型頭痛といった一次性頭痛なのか、ほかの病気が原因の二次性頭痛なのかを慎重に見極める流れです。月に2回以上頭痛があり、市販薬でごまかしている人は、一度は専門外来で相談してみる価値があります。
片頭痛の診療はここ数年で大きく変わりました。2026年には経口のCGRP受容体拮抗薬が登場し、従来の薬が効きにくかった人にも新たな治療の道が開けています。慢性の片頭痛に悩む人ほど、最新の選択肢を知るためにも専門医につながってほしいところです。
まずは今日から、頭痛の記録を1週間つけてみてください。痛みの場所、時間帯、その日の天気や睡眠時間を書き留めるだけで、意外な誘因が見えてきます。その記録を持って頭痛外来を訪れれば、あなたに合った対策が見つかるはずです。