薬局へ通う常識が変わりつつある
日本の処方薬の受け取り方は、この数年で大きく変わりました。従来は病院で診察を受け、紙の処方箋を持って薬局に足を運び、薬剤師から服薬指導を受けて薬を受け取る流れが一般的でした。この流れが、コロナ禍をきっかけにオンライン診療と電子処方箋、オンライン服薬指導、薬の郵送や宅配という形へと広がっています。
背景には高齢化による通院負担の増加や、共働き世帯の増加、感染症対策への意識の高まりがあります。特に地方では、最寄りの薬局まで車で二十分以上かかる地域もあり、処方薬の配送サービスへの期待は小さくありません。体調が悪いときに外出する負担を思えば、自宅で薬を受け取れることの意味は大きいと言えます。
現在、自宅で処方薬を受け取る方法は大きく三つに分かれます。
一つ目は、地域の薬局が行う宅配です。かかりつけ薬局が自宅や施設まで薬を届けるもので、訪問薬剤管理指導とあわせて行われることもあります。福岡など在宅医療が盛んな地域では、薬剤師が自宅を訪れて服薬管理まで支援する取り組みが広がっています。保険適用となる場合が多く、これまで通い慣れた薬局をそのまま利用できるのが利点です。
二つ目は、配送料が無料(一部例外あり)のオンライン薬局サービスです。「とどくすり」や「ヨヤクスリ」といったサービスが代表例で、オンライン服薬指導を受けた上で、処方薬を自宅へ郵送してくれます。
三つ目は、有料の即日配送サービスです。デリバリー大手と提携したサービスや、大手ECの薬局サービスがあります。都内の一部エリアでは、調剤から最短三十分で薬が届く仕組みも動き出しています。
主な処方薬配送サービスの比較
| サービス | 料金の目安 | 配送の速さ | こんな人におすすめ | メリット | 注意点 |
|---|
| 地域薬局の宅配 | 訪問指導費と薬代の保険負担分 | 当日から翌日 | かかりつけ薬局がある人 | 薬剤師が対面で服薬管理 | 対応地域が限られる |
| とどくすり・ヨヤクスリ等の無料型 | 配送料無料(一部例外あり) | 翌日から数日 | まとめて受け取りたい人 | 費用を抑えられる | 緊急時には向かない |
| SOKUYAKU | 登録無料、プレミアムは月額550円 | 最短当日 | スマホで完結したい人 | 診療・服薬指導・配送が一体 | 提携医療機関の確認が必要 |
| みてねコールドクター×キビヤック | 配送無料 | 翌日から最短30分(都内一部) | 急な発熱や体調不良の人 | 全国配送と即日対応を両立 | 離島を除く |
| 即日デリバリー提携サービス | 有料 | 当日 | どうしても今日欲しい人 | 緊急時の受け取り手段 | 配送エリアが限定的 |
今年二月には、オンライン診療アプリ「みてねコールドクター」と調剤薬局のキビヤックが連携し、離島を除く全国への処方薬の無料配送を開始しました。東京都の港区・千代田区・中央区では、オンライン服薬指導の後に調剤から最短三十分で届く即日配送にも対応しています。
また「SOKUYAKU」は、オンライン診療・服薬指導・処方薬宅配を一つのアプリで進められるサービスで、提携するクリニック・調剤薬局・ドラッグストアは二万三千店舗を超えます。登録料は無料で、プレミアムプランは月額550円。薬を受け取るために足を運ぶ必要がなくなるため、忙しい働き世代や小さな子どもを持つ家庭から支持を集めています。
実際に利用するまでの流れ
処方薬の宅配を初めて利用するとき、戸惑う人は少なくありません。流れを簡単に説明すると、こうなります。
まずオンライン診療を受診します。多くのサービスではスマートフォンから予約し、ビデオ通話で医師の診察を受けます。診察後、電子処方箋が発行され、提携薬局に送られます。次にオンライン服薬指導です。薬剤師とビデオ通話をつなぎ、薬の飲み方や注意点について説明を受けます。これを済ませると、自宅に薬が届きます。
都内で子育て中の田中さんは、この流れをこう振り返ります。「夜に子どもが四十度の熱を出して、薬局まで行けなかった。スマホで診察を受けて、翌朝には薬が届いた。あのとき配送がなければ本当に困っていました。」発熱や胃腸症状など急性期の症状で外出できないときこそ、オンライン診療と処方薬配送の組み合わせが力を発揮します。
配送サービスを選ぶときの確認ポイント
処方薬の配送を選ぶ際に、事前に確認しておきたいポイントがいくつかあります。
一つは、かかりつけの医療機関がオンライン診療に対応しているかです。通院中の病院が提携していない場合、新たにオンライン診療に対応するクリニックを探す必要があります。二つ目は、配送エリアと所要日数です。全国配送に対応していても、離島や一部地域は対象外となることがあります。急ぎの場合は、即日配送に対応するエリアかどうかを確認しましょう。
三つ目は、料金体系です。配送料が無料のサービスでも、オンライン診療費や服薬指導費が別途かかる場合があります。複数のサービスを比較して、自分の使い方に合うものを選ぶと良いでしょう。
自宅で薬を受け取る生活の始め方
まずは、自分の住む地域で使えるサービスを確認することから始めましょう。処方薬の配送は、対応エリアや提携薬局がサービスごとに異なります。
小さな一歩として、かかりつけ薬局に宅配対応があるか聞いてみるのがおすすめです。地域の薬局が対応してくれれば、新しいアプリを覚える必要もなく、これまでと同じ薬剤師と関係を続けられます。新しいサービスに挑戦する場合は、体調が安定している日に一度試してみてください。オンライン診療から配送までの流れを事前に体験しておけば、急な体調不良のときでも慌てずに利用できます。
薬を受け取る手段が増えたことは、それだけで医療へのアクセスを広げます。自宅で診察を受け、自宅で薬を受け取り、自宅で療養を続ける。そんな生活を、あなたも一度、試してみてはいかがでしょうか。