日本人の頭痛は「我慢」が当たり前になっていないか
日本では1997年の全国調査で、片頭痛の年間有病率が約8.4%(男性3.6%、女性12.9%)と報告されています。それにもかかわらず、片頭痛患者の8割以上が医療機関で治療を受けていないという現状があります。「頭痛ぐらいで病院に行くのは大げさ」「体質だから仕方ない」——こうした考え方が根強いのは、日本ならではの傾向かもしれません。
特に日本で頭痛を悪化させる要因として無視できないのが「気圧」です。梅雨や台風シーズン、冬の爆弾低気圧が近づくと頭痛が起きる「気圧頭痛」に悩む人は多く、天気痛と呼ばれることもあります。気圧の変化で内耳が刺激され、自律神経のバランスが崩れることが原因とされています。仕事や家事に支障が出ているのに「天気のせい」と片付けてしまうのは、もったいない話です。
頭痛は大きく分けて、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、そして薬の使い過ぎによる頭痛(薬剤使用過多による頭痛)に分類されます。片頭痛はズキンズキンと脈打つような痛みで、吐き気や光・音への過敏を伴うのが特徴。一方、緊張型頭痛は頭全体が締め付けられるような鈍い痛みで、肩こりやストレスが原因となることが多いとされています。治療法もそれぞれ異なるため、自己判断で市販薬に頼り続けるのは危険です。
頭痛外来という選択肢。専門医は全国に約978名
「頭痛外来」と聞いても、どんな場所か想像しにくいかもしれません。頭痛外来は、日本頭痛学会認定の頭痛専門医や脳神経内科・脳神経外科の医師が診察する専門外来です。一般の内科と違うのは、問診を丁寧に行い、頭痛のタイプを見極めることに重点を置く点です。必要に応じてMRIやCT検査を行い、脳卒中や脳腫瘍など命に関わる病気が隠れていないかを確認してから、治療方針を決めます。
日本頭痛学会認定の頭痛専門医は2023年時点で全国に978名と少なく、多くは大学病院や総合病院に勤務しています。ただし、近年はクリニックでも専門外来を設けるところが増えてきました。東京都墨田区のひきふね内科クリニックのように、予約なしで受診できる頭痛外来も登場しています。検索するときは「頭痛外来 〇〇市」や「頭痛専門医 〇〇県」といったキーワードで探すと見つかりやすいでしょう。
頭痛外来の受診を検討したいサイン
- 週に2〜3回以上、頭痛が起こる
- 市販薬が効かない、または効きにくくなってきた
- 頭痛で仕事や家事、学校生活に支障が出ている
- 頭痛の頻度や痛み方が以前と変わってきた
- 吐き気、めまい、しびれを伴うことがある
逆に、突然の激しい頭痛、手足のしびれ、ろれつが回らない、視野の異常などを伴う場合は、迷わず救急受診を検討してください。頭痛外来は「慢性のつらい頭痛」を改善する場であると同時に、「危険な頭痛」を見分ける場でもあります。
治療の選択肢と費用の目安
頭痛治療は、発作が起きたときに使う急性期治療と、発作を減らすための予防療法に分かれます。日本では『頭痛の診療ガイドライン2021』に沿って、症状に応じて薬が選ばれます。軽度から中等度の頭痛にはアセトアミノフェンやNSAIDs、中等度以上または市販薬が効かない場合はトリプタン系の薬が使われます。近年は、片頭痛の予防薬としてCGRP関連薬剤も登場し、治療の選択肢が大きく広がりました。
漢方薬も日本ではよく使われます。片頭痛には呉茱萸湯や五苓散、緊張型頭痛には葛根湯や釣藤散が有効な場合があります。保険診療で処方できるケースが多いのも特徴です。費用は医療機関や薬の種類によって異なりますが、3割負担の保険診療であれば、一般的な範囲で受診できることがほとんどです。詳細は受診時に確認しましょう。
治療法の比較
| カテゴリ | 主な治療 | 特徴 | こんな人に向く | 注意点 |
|---|
| 急性期(市販薬) | アセトアミノフェン、NSAIDs | 薬局で手軽に入手できる | 月に数回程度、軽い頭痛の人 | 週2〜3日以上の使用は薬剤使用過多頭痛のリスク |
| 急性期(処方薬) | トリプタン製剤 | 片頭痛発作に特化して効果が高い | 市販薬が効かない中等度以上の片頭痛 | 心血管疾患がある人は使用できない場合がある |
| 予防療法(内服) | β遮断薬、抗てんかん薬など | 毎日服用して発作を減らす | 月2回以上発作がある、生活に支障が出る人 | 効果が出るまで数週間かかる |
| 予防療法(最新) | CGRP関連薬剤(注射・経口) | 発作の頻度・重症度を大幅に減らせる | 従来の予防薬で効果不十分な慢性片頭痛 | 専門医の処方が必要、2025年発売の経口薬もある |
| 非薬物療法 | 鍼灸、理学療法、トリガーポイント注射 | 薬に頼らず体の状態を整える | 肩こり由来の緊張型頭痛の人 | 医療機関によって対応が異なる |
2025年には経口のCGRP関連薬「ナルティーク」が日本でも発売され、注射が苦手な人でも新しい予防療法を試せるようになりました。ただし、CGRP関連薬剤は日本神経学会や日本頭痛学会の専門医でなければ処方できないため、受診の際に確認が必要です。
まずは頭痛ダイアリーから。今日できる3つのこと
受診の予約を取る前に、今日から始められることがあります。それは頭痛ダイアリーをつけることです。いつ頭痛が起きたか、痛みの場所や性質、吐き気や光過敏の有無、服用した薬とその効果——こうした記録は、診断の精度を大きく上げます。紙のノートでもスマートフォンのアプリでも構いません。2週間から1ヶ月ほど記録を続けてから受診すれば、問診がスムーズに進みます。
次に、薬の使い方を振り返ってみてください。市販の鎮痛剤を週に2〜3日以上使っている場合、薬剤使用過多による頭痛を起こしている可能性があります。薬が効かなくなって「さらに飲む」という悪循環に陥っている人は、一度薬を休めて専門医に相談するのが得策です。
最後に、生活習慣を見直しましょう。気圧頭痛が気になる人は、天気予報アプリの気圧情報をチェックして、低気圧の日は無理をしない予定を組むのがおすすめです。睡眠不足やストレス、目の疲れは片頭痛の誘因になるため、規則正しい生活を心がけてください。首や肩の筋肉をほぐすストレッチも、緊張型頭痛の予防に役立ちます。
頭痛と上手につきあうための行動ガイド
受診を検討するときは、まずかかりつけ医か近くの内科で相談し、必要に応じて頭痛外来や脳神経内科を紹介してもらうのが確実です。「頭痛外来 近く」で検索するのも一つの手ですが、日本頭痛学会のホームページでは専門医の情報を確認できます。地域によっては予約待ちが長いこともあるため、早めの予約をおすすめします。
頭痛は我慢するものではありません。適切な診断と治療を受ければ、多くの人が日常生活の質を大きく改善できます。市販薬に頼る生活から一歩踏み出して、頭痛外来で自分に合った治療法を見つけてみませんか。まずは頭痛ダイアリーを開いて、今日の頭痛を記録することから始めてみてください。