日本の頭痛事情と見過ごされがちな問題
日本では慢性頭痛に悩む人がおよそ4000万人、片頭痛は約840万人いるとされています。それでも市販薬だけで対応したり、我慢し続ける人は少なくありません。受診先が分からないという声も多く、日本頭痛学会は早くから頭痛専門医の認定制度を始め、全国に頭痛外来が増えてきました。
頭痛を放置すると何が問題か。まず、くも膜下出血など命に関わる二次性頭痛を見逃すリスクです。動脈瘤破裂による死亡率は高く、再出血が経過不良の最大の原因とされます。手遅れにならないうちに、専門医による的確な診断が必要です。もう一つは薬剤の使用過多による頭痛(MOH)です。痛み止めを月15日以上、トリプタンを月10日以上使うと、かえって頭痛が増える悪循環に陥ります。
頭痛は大きく分けると三つのタイプがあります。片頭痛はズキズキと脈打つ痛みが片側に現れ、吐き気や光・音への過敏を伴います。月経周期との関連も強く、患者の約半数が月経に絡んで発作を起こします。緊張型頭痛は頭全体がギュッと締め付けられるような痛みで、肩こりや目の疲れ、ストレスが引き金になります。群発頭痛は片側の目奥に激痛が繰り返し起こり、涙や鼻水を伴います。「いつもと違う」「突然の激痛」「麻痺やしびれを伴う」といった場合は、迷わず救急を受診してください。
治療の選択肢と費用の比較
市販薬から始める人は多いですが、ロキソニンS(ロキソプロフェン)やイブA錠(イブプロフェン)などのNSAIDsは効果が強めな一方、胃への負担があります。15歳未満は市販のNSAIDsを服用できないため、小児用のアセトアミノフェン製品を選びましょう。アセトアミノフェンは胃に優しく、授乳中の方でも使いやすいのが利点です。ただし、市販薬を頼りすぎるとMOHのリスクがあるため、月10日以上使うようであれば受診を検討してください。
医療機関では、まず国際頭痛分類に沿って診断が行われます。片頭痛の急性期にはトリプタン製剤が使われ、発作の初期ほど効果が出やすく、人によって合う薬が異なります。血管収縮作用がないラスミジタン(レイボー)や、国内初の経口CGRP受容体拮抗薬として登場したリメゲパント(ナルティーク)など、トリプタンを使いにくい方にも選択肢が広がっています。
予防療法は、発作が月に10日以上ある場合や急性期治療が効かない場合に検討します。CGRP関連抗体薬による注射治療は月1回または数か月に1回の投与で済み、発作の頻度や強度を下げることが期待できます。公的医療保険が適用され、3割負担で1本あたり12,400円から13,500円前後です。注射部位の赤みや腫れなどの副作用はありますが、多くは軽度で時間とともに落ち着きます。
| 選択肢 | 具体例 | 費用の目安 | 向いている人 | 利点 | 注意点 |
|---|
| 市販薬 | ロキソニンS、イブA錠 | 製品により異なる | 月に数回の軽い痛み | 薬局で手軽に入手できる | 使い過ぎるとMOHのリスク |
| 急性期処方薬 | トリプタン製剤、レイボー | 保険診療の自己負担 | 発作が重い片頭痛 | 発作を速やかに抑える | 合う薬の見極めが必要 |
| 予防注射 | CGRP関連抗体薬 | 3割負担で1本12,400〜13,500円前後 | 月5〜10日以上頭痛がある人 | 月1回の投与で継続しやすい | 注射部位の局所反応が出ることがある |
| 生活習慣改善 | 頭痛ダイアリー、睡眠調整 | 自宅で実践できる | 誘因がはっきりしている人 | 薬に頼らず根本改善を目指せる | 効果が出るまで時間がかかる |
地域で活かせる実践的な対策
日本頭痛学会が認定する頭痛専門医は、北海道から沖縄まで各都道府県にいます。神経内科や脳神経外科を標榜する病院・クリニックに頭痛外来を設けるケースが増えており、オンライン診療に対応する施設もあります。通院が難しい方は、かかりつけ医に相談して紹介状を書いてもらうのも一つの方法です。
受診の際に役立つのが頭痛ダイアリーです。痛みの強さ、時間帯、誘因(睡眠不足、気圧変化、月経など)、使った薬を記録しておくと、診断と治療方針の精度が上がります。スマートフォンのアプリでも記録できるため、習慣化しやすくなっています。
片頭痛を起こりにくくするには、規則正しい生活が第一です。寝過ぎ・寝不足を避け、低血糖を防ぐために朝食をきちんと摂りましょう。気圧の変化に敏感な人は、天気予報アプリで前日から予測し、無理のない予定を組むのも有効です。騒音や光、強いにおいが苦手な人は、外出時にサングラスや耳栓を活用すると発作の予防につながります。首や肩の緊張が気になる方は、ストレッチや軽い散歩を日常に取り入れてみてください。
行動に移すためのステップ
- 頭痛ダイアリーを1か月つけて、痛みの頻度と誘因を把握する
- 市販薬の使用回数を確認し、月10日を超えるようなら受診の目安にする
- 日本頭痛学会のサイトで地域別の専門医を探す
- 受診時にダイアリーを見せて、診断をスムーズに進める
- 発作が月に10日以上あるなら、予防療法の選択肢を専門医と話し合う
頭痛は我慢するものではありません。自分の頭痛のタイプを知り、適切な治療と生活習慣の両輪で向き合えば、多くの人は症状を減らせます。まずは頭痛ダイアリーから始めてみてください。症状が重い場合や不安がある場合は、お近くの頭痛外来やかかりつけ医に相談することをおすすめします。