保険料の差が生まれる理由
日本では車を所有する時点で自賠責保険への加入が義務付けられている。ただ、自賠責保険が補償するのは事故の相手方の死傷だけで、死亡でも最高3,000万円、ケガは最高120万円という範囲にとどまる。対物賠償や自分の車の損害、自分と同乗者のケガは入っていない。相手の車が高級車だった場合や、複数の車を巻き込む事故では、賠償額が契約者個人では払いきれない規模になる。だから任意保険は「任意」という名前ではあるが、実際には加入が前提の保険と考えるほうがいい。
保険料を左右する要素はいくつかある。その中心がノンフリート等級制度で、1〜20等級の区分に応じて保険料が割引・割増される。初めて任意保険に加入する場合は6等級から始まり、1年間事故がなければ1等級上がる。逆に保険金を受け取る事故を起こすと、一般的に3等級下がる。20等級まで到達した無事故契約者には6割を超える割引率が適用され、これが長く乗り続ける人と新規契約者の保険料差を生む。盗難や台風、洪水による車両損害は1等級だけ下がる扱いになるなど、事故の種類でも差が出る点は覚えておきたい。
地域も料率に影響する。同じ条件でも都道府県によって保険料が変わり、地方のほうが安く都市部が高い傾向がある。これは地域ごとの事故発生率や保険金支払率が違うためだ。加えて、運転者年齢条件、免許証の色、年間走行距離、車種、そして契約チャネルも効いてくる。店舗や担当者が対応する代理店型と、Webで完結する通販型では後者のほうが保険料を抑えやすい傾向があり、その差は年間で数万円に及ぶ例も珍しくない。
補償は「足りない部分」から埋める
見積もりを取るときに迷いやすいのが、特約をどこまで付けるかだ。すべてを付ければ安心だが、使われない補償に毎年費用を払い続けることになる。優先順位を整理した表を参考にしてほしい。
| 補償・特約 | 内容 | 付け方の目安 | 向いている人 |
|---|
| 対人賠償 | 相手のケガ・死亡への賠償 | 無制限が基本 | すべての契約者 |
| 対物賠償 | 相手の車・建物への賠償 | 300万円以上、可能なら無制限 | すべての契約者 |
| 人身傷害 | 自分のケガを過失にかかわらず補償 | 3,000万円以上を目安 | 家族や同乗者が多い人 |
| 車両保険 | 自分の車の損傷・盗難・災害 | 新車・ローン中は検討 | 駐車環境が屋外の人 |
| 弁護士費用特約 | 示談交渉を専門家に任せる | 数百万円規模を確保 | 費用対効果を重視する人 |
| ロードサービス | レッカー、バッテリー上がり対応 | 付帯範囲を事前確認 | 地方在住、長距離運転が多い人 |
判断の軸は「自分では払えない金額かどうか」だ。対人・対物は金額の上限がない事故が現実に起きるので削る余地は小さい。一方で車両保険は、車の時価が下がっていれば補償額も下がる。数年落ちの中古車で、修理費を自己負担できる貯蓄があるなら外す選択も成立する。免責金額を5万円や10万円に設定すると保険料は下がるが、その分は自分で出す前提になる。
具体的なケースを見てみよう。埼玉県で小学生の子どもを乗せて送迎する30代の共働き世帯なら、人身傷害を厚めにして、子どもが同乗する前提で家族限定の条件を確認する。名古屋市内へ通勤で車を使う20代は、運転者年齢条件を21歳以上にすると保険料が下がりやすく、等級がまだ低いぶん車両保険の要不要を慎重に判断したい。島根県のように車がないと生活できない地域に住む60代は、走行距離が長くなりがちなので、ロードサービスの付帯範囲と人身傷害の補償額を先に固める。同じ「自動車保険」でも、暮らし方によって正解は変わる。
保険料の一例として、東京都・30歳以上補償・20等級・ネット割引適用という条件で、車両保険なしなら年間1万7千円台、限定の車両保険を付けて2万5千円台という見積もりが公開されている。ただしこれはコンパクトなハイブリッド車の概算であり、若年層や事故歴のある契約者、普通車ではこれより高い水準になるのが普通だ。自分の条件での金額は必ず複数社の見積もりで確認したい。
契約前に確認したい手順
見積もりを取る前の準備として、前年の契約内容が分かる書類を手元に用意する。等級と事故有係数適用期間、運転者年齢条件、走行距離区分、免責金額の4点が分かれば、条件をそろえた比較ができる。条件をそろえずに金額だけを見比べると、補償が薄い安い見積もりを選んでしまう危険がある。
比較の際は、通販型2〜3社と代理店型1社を混ぜるのが現実的だ。通販型は保険料を抑えやすいが、事故対応は電話窓口が中心になる。代理店型は担当者が手続きを代行してくれる分、費用は上がる。過去に事故を経験した人や、書類手続きに不安がある人は代理店型の価値が実感しやすい。
契約を続けることも意識したい。満期日に手続きをしなかった場合、新しい契約として扱われ、積み上げた等級の割引が引き継がれないことがある。引っ越しや車の買い替えで等級を引き継ぐには所定の手続きが必要なので、変更があった時点で保険会社に連絡しておく。
困ったときの相談先も把握しておこう。日本損害保険協会には事故や保険に関する相談窓口があり、一般社団法人の自動車事故対策機構は事故後の各種相談に対応している。契約内容で迷ったときは、自治体の消費生活センターに問い合わせる方法もある。修理工場やディーラーが提携保険会社を紹介してくれる場合も多く、車検のタイミングで保険の見直しを合わせて行う人は少なくない。
補償を厚くするほど安心は増すが、その安心が自分の生活に見合った水準かどうかは別の話だ。今年の見積もりを一度開いて、等級と補償の組み合わせを家族で確認してみる。それだけで、来年の支払いは少し軽くなるかもしれない。