日本人に多い頭痛の三つの顔
日本頭痛学会の調査では、片頭痛の年間有病率は8.4%と報告されています。前兆のない片頭痛が5.8%、前兆のある片頭痛が2.6%で、20代から40代の女性に特に多いのが特徴です。一方、肩こりや眼精疲労が原因の緊張型頭痛は、デスクワーク中心の働き方をする人に広がっています。
さらに、梅雨や台風のシーズンになると、気圧の変化で頭痛が起きる「天気痛」に悩む人が増えます。日本では約1000万人以上が天気の影響による不調を感じているともいわれ、四季の移り変わりがはっきりしたこの国ならではの頭痛の形といえるでしょう。
- 片頭痛:ズキズキと脈打つような痛み。吐き気や光・音への敏感さを伴う
- 緊張型頭痛:頭全体がギューッと締め付けられるような重い痛み
- 天気痛:気圧が下がる数時間前から痛みが出るのが特徴
頭痛のタイプを見分ける第一歩は、記録をつけることです。いつ、どんなときに、どのくらい痛むのか。この記録が、薬の選び方や受診の判断を大きく変えます。
市販薬は成分で選ぶ
薬局の頭痛薬コーナーにはたくさんの商品が並んでいます。痛くなってから「とりあえず名前を知っているもの」を手に取る人も多いですが、頭痛のタイプや胃への負担を考えて選ぶと、効果の出方が変わってきます。ここでは、頭痛の市販薬を比較してみましょう。
| 商品例 | 主な成分 | 特徴 | こんな人に | 注意点 |
|---|
| ロキソニンS | ロキソプロフェン | 効き始めが早く痛みに強い | 痛みがはっきりしている人 | 胃への負担がある |
| イブA錠 | イブプロフェン | 生理痛にも効果的 | 女性の片頭痛持ち | 空腹時の服用は避ける |
| バファリンA | アスピリン | 実績の長い定番成分 | 速効性を求める人 | 胃が弱い人は注意 |
| タイレノールA | アセトアミノフェン | 胃にやさしい | 胃腸が弱い人 | 強い痛みには物足りない |
| ノーシン | 複合成分 | 複数の成分で多面的に作用 | 症状が重なる人 | 依存リスクに注意 |
頭痛薬を選ぶとき、ぜひ意識してほしいのが使用頻度です。カフェインや鎮静成分を含む複合鎮痛薬は、月に10日以上使うと薬物乱用頭痛(MOH)のリスクが高まるとされています。単一成分の薬でも、月15日以上になれば同じリスクがあります。「この薬じゃないと効かない」と感じ始めたら、それは薬の使いすぎのサインかもしれません。
福岡県在住の主婦、佐藤さん(42歳・仮名)は、市販の複合鎮痛薬をほぼ毎日飲んでいました。効き目が落ちてきたため頭痛外来を受診したところ、MOHと診断されました。医師の指導のもとで薬をやめてから約2か月、今では月に1〜2回の発作に減ったそうです。「薬を手放すのが怖かったけれど、痛みのない朝が来るとは思いませんでした」と話します。
天気痛には予測と早めの行動
「雨が降る前に頭が痛くなる」。日本の頭痛外来では日常的に聞かれる相談です。気圧が下がると内耳の気圧センサーが反応し、自律神経のバランスが乱れて血管が拡張する。これが片頭痛の発作につながると考えられています。
天気痛の対策でいちばん効果的なのは、天気予報アプリで気圧の変化を先に知ることです。気圧が下がり始めるタイミングで、次の行動を取りましょう。
- 睡眠時間をいつもより30分長く確保する
- カフェインの摂取を控えめにする
- 首や耳まわりを温めて血行を促す
- 痛みが出たら市販薬を早めに1回分だけ飲む
東京都内で働く田中さん(36歳・仮名)は、以前は台風のたびに半日仕事を休んでいました。気圧アプリの通知を頼りに、下がり始めた段階でロキソニンSを1錠飲むようにしたところ、発作の回数が半分以下に減ったそうです。「飲みすぎないように、1日1回までと決めています」と話します。
専門外来で広がる片頭痛治療の選択肢
市販薬でどうにもならない頭痛、月に4回以上の発作がある場合は、頭痛外来の受診を検討する時期です。日本頭痛学会のガイドラインでは、発作の回数や重症度に応じてトリプタン系薬剤や予防薬が処方されます。
最近では、CGRPという物質の働きを抑える新しい治療薬も登場しています。血管を収縮させる作用がないため、心臓や血管への負担を気にする人にも使いやすいのが特徴です。発作時の治療と予防の両方に使える経口薬も国内で処方できるようになり、片頭痛治療の選択肢は確実に広がっています。
頭痛外来は、脳神経内科や脳神経外科を標榜するクリニックにあります。東京や大阪のような都市部だけでなく、岐阜や福岡など地方都市にも専門外来を設ける医療機関が増えてきました。受診の際は、頭痛ダイアリーを持参すると問診がスムーズです。いつ、どのくらい痛いか、何を飲んだか、吐き気はあるか。3週間ほど記録するだけで、診断の精度は大きく変わります。
今日から始める3つのステップ
頭痛に悩む人がすぐにできることを整理します。
- スマホのメモ帳で頭痛ダイアリーを始める。痛みの強さを10段階で記録する
- 市販薬の使用頻度を振り返り、月10日を超えていたら複合鎮痛薬を避ける
- 地域の頭痛外来を探し、記録を持参して予約を取る
頭痛は我慢するものではありません。日本の気候と働き方に合わせた対策を取れば、痛みと付き合う時間は確実に減らせます。まずは今日から1週間、自分の頭痛を記録してみませんか。その記録が、あなたに合った治療への第一歩になります。